人は運転すると本性が出るとか、一週間その人と旅をすると本当の人間性がわかるというけれど、それでもうまく隠せる人はいるものだ。なぜなら私の元カレは運転中に渋滞にハマっても無茶な割り込みをされても穏やかでいられたし、ハワイに一週間海外旅行をしたときだって、私を家に送り届けてくれるまでずっと優しかったのだから。
そんな彼の人間性について、初めて「？」と思ったのが、私の家でトイレが詰まってしまったとき、彼のその対応の仕方を見て違和感を覚えたことだった。前々からトイレの流れは悪かったし、彼にもトイレの調子が悪いとは伝えておいたので、彼が用を足した後に「詰まっちゃったかも」と言われたときは、あぁ、とうとう詰まっちゃったかくらいにしか思わなかったのだが、彼は自分が詰まらせてしまったという負い目もあり、少し苛立っているようだった。彼の手配で業者が来てくれたのだが、その業者に対しての上から目線のぞんざいな言い方に、聞いている私も気分が悪くなってしまった。そういえば前にもこんなことがあったな…と振り返ってみると、彼の家で上の住人の家から水漏れしたときも、彼は同じように高飛車で威圧的な態度を取っていたことを思い出した。それに、彼が実家に電話をかけているのを聞いたことがあるけれど、私に対しての優しい態度とは正反対に、とても家族とは思えないくらい冷たくて他人行儀な態度に驚いたこともあった。もし私が彼と結婚して家族になったら…威圧的で冷たい彼の顔が私に向けられているのが頭に浮かび、私は背筋が寒くなった。
それから私は彼と別れることになった。初めは紳士的な彼だったけれど、私の考えが変わらないことがわかると態度が豹変し、あの時のお金を返せだの、プレゼントであげた貴金属を返せだのと怒鳴りだした。身のすくむ思いで何とか別れたけれど、あのとき彼と別れて本当によかったと、今になってしみじみ思う。